プラズマは大気圧で定常的な放電を行うと、電子温度とガス、イオンの温度が一致する熱平衡プラズマになります。
熱平衡プラズマは一般に高温となるので、熱プラズマと呼ばれています。
熱平衡プラズマは、熱平衡が保たれている領域が、極めて狭いという意味で、Local thermodynamic equilibrium plasma、LTEプラズマという表記もよく見かけます。
名称 | 熱平衡プラズマ | 非熱平衡プラズマ |
別名、英語表記 | 熱プラズマ Local thermodynamic equilibrium (LTE) plasma |
低温プラズマ Non-LTE plasma |
電子とガス温度 | 電子温度 = ガス温度 両温度とも、約10,000K |
電子温度 > ガス温度 電子温度 10,000~100,000 K ガス温度 300~1000K |
プラズマ密度 | 1021-1026 m-3 | 1019 m-3 |
例 | アーク放電 | グロー放電 |
用途の例 | 溶接、微粒子の改質及び製造、廃ガス処理など | プラスチック、生体材料の表面処理、分析、殺菌など |
アリオスの技術 | マイクロ波プラズマ RFプラズマ | 誘電体バリア放電 (マイクロ波プラズマ) 2) |
図1 金属線に電圧印加し、大気圧マイクロ波プラズマの発光部を誘引している様子
熱平衡、非熱平衡いずれの大気圧プラズマも多くの用途で既に使われています。
表1では、熱プラズマと低温プラズマは区別されています。
この境界は厳密には線引きが可能でしょうが、実際には連続的な変化です。
すなわち、熱平衡プラズマと非熱平衡プラズマの中間の性質を持った境界領域のプラズマを作ることも出来ます。
たとえば、非熱平衡タイプの代表であるハンディタイプのプラズマジェットを用いて、プラスチックの濡れ性改善など表面処理効果を確認できたとします。
しかし、量産化を目的とした場合、ハンディタイプのプラズマジェットは、小型に適した構造を持っているために、そのまま大きくするのは現実的では無い場合があります。
処理速度を上げるためには、大型化に適した構造を採用し、プラズマの高密度化、ガス温度を上げていくといったことも必要になります。こうした場合は、境界領域のプラズマ源を検討することになります。
別ページに記載した
マイクロ波励起の直線型大気圧プラズマ源 は、上流のプラズマ源で放電を安定に得ることが可能であるため、低電力運用とガス温度が低いプラズマを供給できます。
さらに、マイクロ波励起プラズマは、パルス化されたマイクロ波電源を使うことにより、熱平衡から非熱平衡までを連続的に可変することも可能です。
こうした大気圧プラズマの産業応用においては、プロセスを実現する プラズマのパラメータ を正確に把握することが必須 になってきます。
当社では、大気圧プラズマも含めプロセスプラズマ全般にわたり、発光分光および ラングミュアプローブ といった複数のプラズマ測定技術を保有しております。
こうした基本的な測定技術に基づき、プラズマ診断から大型化のご相談まで幅広いご要望をいただいております。
また、大気圧プラズマをラングミュアプローブで測定する場合の留意点を 相談室 ラングミュアプローブ Q11 にまとめています。
熱平衡プラズマは非常に高温です。
これを用いて、タングステンなど高融点金属も蒸発させることが出来ます。
図2は、熱平衡である大気圧マイクロ波プラズマで作成したタングステンナノ粒子です。
プラズマ中にタングステン棒を差し込み、加熱蒸発させ、下流で冷却凝固させて製造しました。この画像から、粒径の揃った粒子を製造できることがわかると思います。
図2 マイクロ波プラズマで作成したタングステン粒子 (大阪大学 中山先生(現 長岡技術科学大学 准教授)ご提供)
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